大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 平成6年(ラ)26号 決定

主文

一  原決定を取り消す

二  相手方は抗告人に対し、別紙物件目録記載の不動産を引き渡せ。

三  申立費用及び抗告費用は相手方の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  一件記録によれば、次の事実が認められる。

(一)  抗告人は、松山地方裁判所平成五年(ヌ)第一一号強制競売申立事件(以下「基本事件」という。)において、別紙物件目録記載の不動産(以下「本件建物」という。)を買い受け、その代金を平成五年八月三〇日に納付して、その所有権を取得した。

(二)  本件建物に対する抵当権者株式会社兵庫銀行の抵当権設定登記後ではあるが、基本事件の差押の効力発生前からの本件建物の占有者であり、その占有権原について賃借権(平成四年一一月一日契約締結)を主張している山田花子は、右差押の効力発生後である平成五年八月頃に、同人の主張する賃貸人(基本事件の所有者。以下「原賃貸人」という。)の承諾なく本件建物を相手方に使用賃借し、相手方は以後本件建物を占有している。

(三)  そして、抗告人も、相手方の右転使用賃借を承諾していない。

2  右認定事実によれば、相手方は、差押の効力発生後に本件建物の占有を開始した者であるところ、仮に山田花子が(短期)賃借権を有していたとしても、相手方の転使用賃借につき原賃貸人又は抗告人の承諾はないので、民法六一二条一項により、右転使用借権をもつて抗告人に対抗することはできない。

その他、一件記録を精査しても、相手方が抗告人に対抗することができる権原により占有していることを認めるに足りる資料は存しない。

以上によれば、抗告人は、民事執行法八三条一項により、抗告人に対抗できる占有権原を有しない占有者である相手方に対し、引渡命令を求めることができる。

三  結論

よつて、抗告人の本件申立は理由があるところ、右と結論を異にする原決定は相当でないので、原決定を取り消したうえ、抗告人の本件申立を正当として認容し、申立費用及び抗告費用を相手方に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 砂山一郎 裁判官 一志泰滋 裁判官 渡辺左千夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例